海水魚飼育を始めるとき、まず最初に悩むのが水槽のサイズ選びではないでしょうか。「とりあえず小さい水槽から始めてみよう」と考える方も多いですが、水槽のサイズにはそれぞれメリットとデメリットがあります。
この記事では、これから水槽を購入したいと考える方向けに、後悔しない水槽サイズ選びのポイントを解説します!30cm・45cm・60cm・90cm・120cmと主要サイズごとにそれぞれの特徴や注意点もご紹介していますので、ぜひ参考にして下さい。

初心者なんだから、小さいサイズから始める方がいいっしょ!

いいえ、ジョーさん。実は60cmくらいから始めた方が良いこともあるんですよ。
なぜ水槽のサイズ選びが重要なのか?
水槽のサイズ選びは、その後の飼育のしやすさに大きく影響してきます。ここでは、なぜサイズ選びが重要なのか、その2つの理由を詳しく見ていきましょう。
理由1:水の安定性が大きく変わる
水槽のサイズは、「水質の安定」に直接関わってきます。水量が多いほど、水中に溶け込む老廃物や有害物質の濃度が薄まり、水質や水温の変化が緩やかになるのです。大型水槽は、一度環境が整えば、初心者でも比較的簡単に良好な水質を維持できるため、初めから大きめのサイズを選ぶ方も少なくありません。
一方で、小型水槽はわずかな汚れや温度変化でも水質が急変しやすいという特徴があります。このため、こまめな水質チェックや水換えが必要となり、生体にとってストレスとなることもあります。
理由2:生体やレイアウトの選択肢が変わる
水槽のサイズによって、飼育できる生体の数や種類、そしてレイアウトの幅も広がります。カクレクマノミであれば30cm水槽でも十分飼育可能ですが、複数匹飼う場合、サンゴやイソギンチャクを迎え入れたい場合は、より広いスペースが必要です。
小さな水槽では、生体同士の縄張り争いが起きやすかったり、レイアウトに限界があったりします。大きな水槽であれば、生体たちがより快適に過ごせるだけでなく、ライブロックやサンゴを配置して水槽内をカスタマイズしていく楽しみが広がります。
そのため、個人的には大きめの水槽から始めることをおすすめします。もちろん、水槽サイズが大きくなるほど価格も高くなる傾向にありますが、後述するサイズアップする際のデメリットを考えると、最初から60cmくらいの水槽を選ぶ方がより豊かな海の世界を創りやすいでしょう。
後悔しない!水槽サイズ選びの5つのポイント
ここでは、それぞれの飼育計画に合った水槽を見つけるための5つのポイントを、具体的な視点から解説します。
ポイント①飼育したい生体から考える
まずは、「何を飼いたいか」をイメージしてみましょう。主な生体ごとに必要となる水槽サイズの目安は以下の通りです。
- カクレクマノミや小型ハゼ:30cm〜45cm水槽でも飼育可能
- 小型のヤッコやハギ:成長すると大きくなるため、60cm以上の水槽が理想的
- サンゴやイソギンチャク:種類にもよるが、水質を安定させる必要があるため最低でも45cm以上の水槽が推奨される
生体の習性や最大サイズを事前に調べ、後悔しないサイズを選びましょう!
ポイント②水槽に収める生体の数を考える
小さい水槽に魚をたくさん入れすぎると、水質が悪くなったり、魚同士がケンカをしたりする問題が起こりやすくなります。
魚のフンや食べ残しは、時間が経つと水槽の水を汚す原因に。これをきれいにするのが、ろ過フィルターの中にいる目に見えない微生物「バクテリア」の役割です。しかし、魚が多すぎると、バクテリアが汚れを処理しきれなくなり、水質が急に悪くなってしまいます。汚れた水の中では、魚が病気になったり、最悪の場合、死んでしまったりするリスクが高まるのです。
また、魚には自分の縄張りを持つ習性があります。水槽が狭いと魚同士がストレスを感じ、常にケンカしてしまうことに。これが続くと、魚は体力を消耗し、病気にかかりやすくなってしまうのです。
そのため、「飼いたい魚の種類や数が水槽の大きさに合っているか」を事前に調べておきましょう。魚の種類によって、必要な広さや隠れられる場所の数などが異なります。余裕を持ったサイズの水槽を選ぶことが、魚の健康を守るためにも大切です。
ポイント③設置場所と予算を考慮する
水槽は水を入れると想像以上に重くなります。例えば、60cm水槽の場合、水・砂・ライブロック・機材などを合わせると約80kg〜100kgにも。
「設置場所の床がその重量に耐えられるか」「電源は確保しやすいか」など、物理的な条件を事前に確認しておきましょう。また、水槽本体だけでなく、ろ過フィルター・照明・ヒーターといった機材、そして生体やライブロックなど、すべての初期費用を予算に含めて検討することが大切です。
ポイント④ろ過能力と機材のグレード
水槽サイズが大きくなれば、それに伴って必要なろ過能力も高まります。ろ過フィルター・プロテインスキマー・照明・ヒーターなどの機材は、水槽のサイズに合った性能のものを選ぶ必要があります。
大きい水槽ほど、求められる機材の性能レベルが上がってしまうため、費用も高くなってしまうのです。水質を安定させやすいのは大きめサイズの水槽ですが、トータルでかかる予算との兼ね合いで選ぶのが現実的でしょう。初心者は、まずろ過フィルターがセットになった水槽から始めるのがおすすめです。
ポイント⑤メンテナンスのしやすさ
水換えや掃除など、日々のメンテナンス作業のしやすさもポイントです。「作業スペースを確保できるか」「機材のメンテナンスがしやすいか」などもチェックしましょう。
例えば、90cmや120cmの水槽では、底の方まで手が届かないことも考え、サンゴが落ちてしまったときなどには結構不便です。メンテナンスは大きな水槽ほど手間がかかる、と考えておくと良いかもしれません。
サイズ別!メリット・デメリット徹底比較
ここでは、主要な水槽サイズごとのメリットとデメリットを比較し、自身のライフスタイルに最適な水槽を選ぶヒントを探っていきましょう。
30cm水槽
- メリット:省スペースでデスクの上などにも置けるため、初期費用が最も安く済みます。特に30cmキューブタイプは1台持っていても損はないサイズでしょう。まずは海水魚飼育を試してみたいという方におすすめです。
- デメリット:水量が少ないため水質が不安定になりやすく、こまめな水質チェックや水換えが必要です。飼育できる生体もカクレクマノミ1〜2匹など、ごく限られます。
45cm水槽
- メリット:省スペースでありながら、水量が増えるため30cm水槽より水質が安定しやすいです。初心者でも扱いやすく、設置場所と水質安定性のバランスが取れたサイズといえるでしょう。
- デメリット:飼育できる生体やレイアウトに限りがあり、成長すると手狭になってしまう生体もいます。
60cm水槽
- メリット:海水魚飼育の標準サイズです。水量が多く水質が安定しやすいため、トラブルが起きにくいのが最大のメリット。生体やサンゴの種類を幅広く選べ、レイアウトの自由度も高まります。
- デメリット:初期費用や維持費が45cm以下に比べてかさみます。また、設置スペースも広めに確保しなければなりません。
90cm水槽
- メリット:比較的大きな魚や複数サンゴの群生など、迫力あるレイアウトが楽しめます。水量が多いことで水質が安定し、飼育が成功しやすいのも特徴です。
- デメリット:設置場所が限られ、床の補強が必要になる場合もあります。機材や水槽自体の価格が跳ね上がり、維持管理にもかなりの費用と手間がかかります。
120cm水槽
- メリット:大型水槽ならではの壮大なレイアウトを満喫でき、水質の安定性も非常に高いです。
- デメリット:設置も難しく移動はほぼ不可能。維持管理にも結構なコストと手間がかかります。
水槽サイズアップ時に知っておくべき注意点
初心者の方の多くは「まずは小さい水槽から」と考えがちですが、後から後悔することも少なくありません。ここでは、将来的なサイズアップを見据える上で知っておくべき注意点を解説します。
水槽の引っ越しは生体に多大なストレスとなる
小型水槽から大型水槽へ買い替える場合、水槽の「引っ越し」は魚やサンゴにとって大きなストレスとなります。元の水槽と新しい水槽の水質を完全に一致させることは難しく、わずかな違いでも生体にとっては負担です。
中には、引っ越しが原因で死んでしまう生体もいることを理解しておきましょう。
想像以上の手間や労力がかかる
新しい水槽は、ゼロから立ち上げる必要があります。水槽内にろ過バクテリアが十分に定着するまでには、少なくても1ヶ月程度かかることが一般的です。その間は水質が不安定になりやすく、こまめな水質チェックや部分的な水換えが必要になります。
また、既存の生体を新しい水槽に移す際には、慎重な水合わせが必要です。新しい水槽と古い水槽の水の水温やpHなどの水質をゆっくりと合わせることで、生体にかかるストレスを最小限に抑えられます。
機材を買い直す必要がある
小型水槽から大型水槽に買い替える場合、水槽本体だけでなく、それに合わせたろ過フィルター・照明・クーラーなど、すべての機材を買い揃える必要があり、まとまった出費となります。
さらに、水槽が大きくなると、普段のメンテナンスも大変になります。例えば、水換えの際には、より多くの人工海水を用意しなければなりません。バケツを何往復もさせる必要が出てくるなど、単純な作業も労力が増えます。
設置場所の確保と物理的な問題
大きな水槽は見た目以上に重くなるため、床の強度を確認したり、設置場所を確保したりする必要があります。一度設置したら簡単に動かせないため、適切な場所を選ぶことが重要です。
まとめ
海水魚飼育では、水槽サイズによって水質の安定性・飼育できる生体の種類や数・日々のメンテナンスなどの手間が大きく変わります。私自身、初めに45cmスリムタイプを購入してから、1カ月も経たずに60cmハイタイプに買い直した経験があり、魚たちに負荷をかけてしまいました。
この記事でご紹介した各サイズのメリット・デメリットを参考に、ライフスタイルや飼育したい生体、そして予算に合った最適な水槽を見つけてください。適切なサイズを選ぶことが、後悔のない、楽しいアクアリウムライフにつながるでしょう。


